2012年05月25日

Webに爆誕した「studygift」という善意の塊の壮絶なオチ

このサービスに関してはかなり早い段階で「マネーの虎」と表現している人がいて、それに納得したので確かにこれだけ揉める(炎上する)のも当然だなと思って見ていた。要するにこれは「その人物とプレゼンを公開コンテンツにして金を出してもらう」というシステムで、言い方を変えれば「人間そのものを面白コンテンツに変換し、個人情報と身を削って集金するサービス」あたりが多分実態に近い。(恐らく関係者は否定するだろうが、実際問題としてそういうサービスとしてしか作られてなかった。)違いとしては資金を募る相手がマネーの虎では実業家のみだったが、今回のは別に金持ちじゃない不特定多数が対象だったというあたりだろうか。

マネーの虎の視聴者がコンテンツと化した“志願者”に何を求めていたかといえば、正の方面では「人を納得させるプレゼンと金を受け取るに値する人物(人格)」で、負の方面では「アホなプレゼンをかまして成功者にボコボコに叩かれる暗愚な凡人」だった。基本構造が変わらないのだからこのstudygiftにも同じものが求められていたわけで、“適切なコンテンツ”さえ供給されれば視聴者(今回はWebなので「閲覧者」か)は満足して拍手喝采するはずだった。しかしここで致命的なミスを犯してしまう。

「さあ!右や左の旦那様!!」と勢いよく始めたのはいいものの、壇上に上がったのは「Google+で一位になった」とか全力でアピールするiPhoneいじってる女子大学生。奨学金が打ち切られたと言うだけで理由も背景もほぼ何も語られず、「PCにステッカーとか貼るよ!」「SNSで宣伝するからサンプルとかよろしく!」とか大アピール。おまけにこんなイベントで露出しまくってたせいで余計にイメージが悪くなるありさま。これはもう善意で金を集めるコンテンツとしては最悪に近く、この時点で客が望むのは「ノーマネーでフィニッシュです!」しかありえない展開になっていた。

さらに悪かったのはこの人物を前面に押し出して大プッシュしたせいで、「学費支援」という建前自体がほとんど機能しなくなったこと。端から見れば「すでに一定の知名度のある人物がコネで実業家にプロデュースしてもらい、本人から金をもらうならまだしも、不特定多数からその知名度でさらに金を集金する」という構図でしかなく、開始直後から地雷原にそびえ立つ火薬庫のような様相を呈していた。

で、どうなったかといえばもちろん大炎上。Web界隈のみならず、最初にリンクした記事のように2chの格好のウォッチ対象になり、まとめWikiまで作られるレベルになった。「なぜ炎上するのかわからない。寄付したい人だけ寄付すればいい」という意見はいくつもあったが、そもそも“人間自体を公開コンテンツとして不特定多数相手に使う”というサービスの時点でそれは不可能だったろう。だが結果としてこの記事によれば300万円以上(一般98万+企業10万×20社以上)がたったひとりに集まったわけで、目論見どおりかそれ以上の大成功だったのは間違いない。

ちなみにこれ、マネーの虎の話に戻すなら「局の仕込みでどっかのタレントが志願者に。糞過ぎる企画アイデアとバカにした口調でひんしゅくを買いまくるが、結果はなぜか3000万円でマネー成立!おめでとうございます!!」という感じだろうか。これにせめて内部からツッコミが入ればよかったのだろうが、(ネタを仕込んだ)本人から出てきたセリフは「ざまーみろ!」だったわけで、そりゃもう火事現場にタンクローリーを突っ込ませたような対応だった。本人達はその後“炎上狙ってない”と語っていたが、この時点では「まったく言い訳になってないし、もし本気ならむしろそっちの方が凄いね!」という感想しか浮かばなかった。

善意の学業支援かと思ったら個人的な下半身支援になっていたでござる

普段ならこれで「はいはい炎上マーケティング大成功。実業家と企画者はWebサービスを成功させ、女子大生は学費を受け取り、ネットユーザは騒げるネタを提供してもらってWin-Win-Winですね!」と終わっていたのだが、どうやら今回はそうではないらしい。「ネタばらし」的な記事がいくつも出てきている。

いくつか列挙するだけでも

  • 大学生だと思わせていたらとっくに退学していて単なる「元大学生」だった。
  • というか2年前期までしか学費を払ってないので、実質的に1年半しか在学してなかった。
  • すでに退学してるので金が集まっても学費に使えるかすら不明。
  • 彼女の(奨学金についての)話ありきで、救いたいと思って作った”とのことで、「学生」支援という建前がまともに機能しないのは必然だった。(実際に他の学生が利用しようと思っても参加フォーム自体が最初は存在しなかった。)
  • “説明が足りなかった”“誤解を招く可能性”ということで、実は言い回しや表現の問題だったという落し所にしようとする凄い言い訳。
  • 「学費支援プログラム」だが、次の学生が利用できるかは色々込み入ってるのでまったく未定。

とまあ中々豪快な内容。さすがにそのまま続けるのは無理と判断したのか、希望者には返金するという形に落ち着くようだ。

前述のとおり、個人的にはこの炎上ネタは「最初に提供されたコンテンツが糞過ぎたので建前がまったく機能しなかった」という問題だと思っていた。端的にこれを表現したツイートがあったので引用すると以下のような感じ。

ところが実際はそれ以上に内情がぶっ飛んでいて、下半身パワーが全開だったのは金を支援をする方だけじゃなくサービス企画者もそうだったし、女子大生だと思っていたらGoogle+で話題になった時点ですでに学生ではなかったし、そのせいで「学費支援」というサービスの建前というか屋台骨自体が揺らぎまくっているのに「お前らが誤読したのが原因だ」と言い出したりと、想像以上に面白すぎる案件に発展してしまった。本来人間をコンテンツにするならガチガチの予防線をはっておくべきで、今回の学費支援サイトなら、最初のコンテンツは絶対に「どこからも叩きようがない優秀なのに報われない苦学生」あたりを用意しなきゃ話にならなかった。とはいえ前述のように“彼女の(奨学金についての)話ありき”だったわけで、そういうルートは最初から存在のしようがなかったわけだけど。

女子大生の為に徹夜で頑張る男の動機は下心。100%下心。

女子大生の為に頑張る男は下心。 - 真性引き篭もり

しかし、今回はむしろ炎上して良かったんじゃないですかね。これが綺麗にそのまんま終わったら、発案者の好きな女性へのプレゼント企画にみんなの奨学寄付がまんまと流用されたという事態になっていたわけですから。

僕秩ヨシナガさん、自身が想いを寄せる女性への寄付を募る目的でStudygiftを立ち上げたということでFA: やまもといちろうBLOG(ブログ)

この件に関して「拙速」と表現してた人がいたけど、もし下半身に血が集まってこの結果になったんなら「拙速案件」というより「早漏案件」と呼称した方が実態に近かったんじゃないですかね。

……といったところをオチにして記事を終わろうと思ったら、その後「本当に下半身直結の話だったよ!」というネタが出てきてしまった。

このお二人が付き合ってる(一部では同棲中とも)という噂は以前からありましたね。 同じ時に同じ景色を撮ったという写真でバレバレになったり。

(中略)ヨシナガ氏のメルマガに、ある時から突然、スタッフとして表記されるようになったり。

惚れた女(坂口綾優)のために皆からカネを集めたヨシナガ氏は男の鑑だね! #Studygift|【がらくたチップス】

こういうのは“「口説く代わりにWebサービスを作って親切アピール」という新たなDT力の発露”みたいなネタ的煽りだからこそそれなりに面白いのであって、本当にズブズブだった結果がこのありさまなら真のそびえ立つクソにしかならない。「支援プラットフォーム」というスケールのでかいテーマを掲げて立ち上げ、早稲田を巻き込んで大炎上したかと思ったら、最終的になぜか個人の下半身問題に集束という息もつかせぬ超展開。もはや学費支援がどうとか一切関係なくて本当に凄いオチですね。

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2012年05月11日

もし現役首長が「知り合いのスーパーハカーが黙ってないぞ」と言いだしたら

上記の件でまず面白いのは、セキュリティというかプライバシーの問題なのにそれに市長が二重の意味で気がついてないという点。ひとつ目は「貸し出し記録は個人情報だと思ってない」というところで、それは以下のように語っていることからもすぐわかる。

これ個人情報だって名の下にね、全部廃棄してたんですよ。なんで本をね、借りるのが個人情報なのか、って僕なんか思いますので

(中略)僕はもう、元々、何を借りたかっていうのは、なんでこれが個人情報だ!って思ってる

高木浩光@自宅の日記 - 武雄市長、会見で怒り露に「なんでこれが個人情報なんだ!」と吐き捨て

ふたつ目は「プライバシー問題で突っ込まれた」ということ自体に気がついてないという点で、当人としてはどうも「産総研という国の手先から地方行政改革潰しを仕掛けられた」と思い込んでるようだ。これは以下の発言あたりがわかりやすい。

また次のような的外れな要求をしてしまうのも、プライバシー(セキュリティ)の問題だと根本的にわかってないからだろう。

これに関しては「専門外のことは語れない」「脅迫されている」と真っ当な理由で断られているのだが、もちろん理解できず“逃げた”と言いだしてそのまま勝利宣言。端から見れば愉快な人状態がなおさら際立ってしまった。

普通に考えれば“多くの国会議員や上司に報告する”と言いつつ“脅迫など一度もしたことない”などと返すのはアホすぎるダブスタにしか見えない。ところが本人にとっては「(国の組織に)パワーゲームが仕掛けられた」としか理解してないから、同じ土俵で戦ってるつもりなのだろう。それどころか「強大な国 vs 小さな自治体」という脳内対立になっていて、「自分はむしろ弱者である」という感覚すらあるのかもしれない。まあどっちにしても挙動から推察すると突っ込まれた記事の中身はまったく見ておらず、興味があるのは発言者の肩書きだけのようだ。

「兄貴の友達の親戚の知り合いのはす向かいにある行きつけの床屋の息子のスーパーハカーが……」

この揉め事を見ていて思い出したのが、掲示板なんかでエキサイトすると「友達のスーパーハカーに頼んでお前の住所氏名(略」とか言い出す古典的なネットの愉快な方々。もちろん根本的に違うのは今回これを言いだしてるのはいい年こいた成人であり、氏名年齢所属経歴顔面を全部公開してる公人であり、しかも紛うことなき権力者の首長であるところ。夏休みの中学生がスーパーハカーを持ち出すなら懐かしの微笑ましい光景だが、大人どころか権力者である市長が同レベルでやり出せば中二病や痛い人レベルの話ではない。それこそパワーゲームだ。

そもそもこの人、「日本ツイッター学会」とか「日本フェイスブック学会」とやらを自分で立ち上げて自分で会長を名乗っている。大概こういう「それっぽい名称の団体を自分で作ってトップを自認する」というのは怪しい組織の方か、個人ならメンヘラ方面の人や自己顕示欲が強すぎる人がよくおこなう手法。それを首長になってもやるというのはある意味凄い。

話題になるネタを提供してくれる自治体トップというとかつては阿久根市、現在進行形でも東京や大阪などがあるが、武雄市がその常連の仲間入りできるのか興味深い。個人的な予想としては、ナチュラルボーンに揉め事を引き寄せそうな体質でネットの活用を標榜、おまけに現役首長と来てるわけだからこれで終わることはなさそうだとは思うが。

タグ:揉め事 twitter
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