2012年06月01日

僕の見た援助。 -studygift炎上記-

結局、希望者のみではなく全員に全額返金という形で幕を閉じることになった。中身としては元切込隊長が提案していた落し所にそのまま収まった、ということになる。表の主役が元ペパボ社長ああいう女性だったなら、その後公表された内情をいち早くぶちまけていたという点も含めて切込隊長が影の主役だったイメージが強い。

サービス自体の印象は以前書いた上の記事と変わらない。発端は大義名分と実態(中身)がずれまくっていたことで、その後も誤った情報で金を集め続けたことが最大の問題だったのだろう。さらに支援対象者が完全に身内だったにも関わらずそれを明確にしなかったこと。おまけに炎上中も批判を「やることこそが正しい」と突っぱね続け、最後に煽り返したのがとどめになった印象はある。ただ根本的にはサービス側のあらゆる対応が後手後手に回ったのが、大炎上の決定的な原因だろう。

今振り返って「何がダメージコントロールを不可能にしたのか」と考えると、大きく3つぐらいのポイントがあったのではないかと思う。

1.サービス開始前 - 「学費を支援する」なのに用意したのが身内の非学生

当たり前だが「学費・学生を支援する」というサービスなら対象は学生でなくてはいけない。これはもう揺るがしようがない根本的な話だろう。ところがその時点から間違っていたわけで、すでに説明が云々とかいうレベルの話ではない。まともに考えれば気がついた時点で即座に止めるか、逆に「これは学費とか一切関係なくて単に女性にお金をあげるサービスです」あたりに看板を掛け替えるぐらいしか、個人的にはつじつまを合わせる方法が思いつかない。

「よかった。学費が払えない学生は“本当に”いなかったんだ……」

これによって大義名分はまったく通用しなくなり、本人達は否定しているが「騙して身内をプロデュース」という行為そのものになってしまった。これはまさに企画の根幹に関わるところだったはずだが、事後の対応を見る限りほとんど詰められずにオープンしたようだ。「学生を助けたい!」→「学生じゃないじゃん」というのはもうコントのレベルだろう。

とはいえ“彼女の(奨学金についての)話ありき”と本人達が語ってるので、もう企画スタート時からどうしようもなかったと言えるのだが。

下半身“で”火をつけろ!

前の記事でもネタにしたように、炎上初期では「(こんなサービス作るぐらいなら)お前が直接金を出せよ」と散々言われていたし、中盤を過ぎたあたりからは「付き合ってる女のために〜」というあたりに注目が移っていった。とはいえ炎上ではなくサービスそのものに着目した場合は、交際云々というのはあまり重要なポイントではなかったと思っている。なんせ受益者と運営が一心同体だったわけで、下心があろうがなかろうが「身内のためのサービス」であったことは揺るがないからだ。

とはいえこのポイントは後に別の効果を生み出す。「炎上したWebサービス」というよくある話題から、「ネット有名人のゴシップネタ」というあまり人を選ばないうえに珍しい話題に注目点が変化した。やれ教育がどうの、奨学金や支援がどうのという社会的なテーマに話が終始したなら、ここまで耳目を集めるのは不可能だったように思える。だがそれが「有名人が女のためにサービスを立ち上げ、詐欺まがいの方法で善意の金をむしり取る」という見立てになったらどうか。これは盛り上がらないわけがないダブル役満ぐらいのネタだ。

つまりあの人選は前述のように学費支援という企画にまったく適していなかったが、逆に「炎上の燃料」としてはこれ以上ないほど適任だったということになる。「適材適所」という言葉の偉大さを改めて感じる事例かもしれない。

ちなみに「実際どうだったのか?」については影の主役である切込隊長が以下のように語っているので、憤慨したり噴飯したり個人で好きにすればいいんじゃなかろうか。

2.サービス開始後 - 前提となる情報を書き換えるが集金は続ける

学費募集のための初っぱなのアピールが「Google+で1位です!」で、この時点からすでにおかしいとも言えるが、それ以上に金を集めてる真っ最中なのに「すでに退学してる」「金が集まっても復帰できるか不明」などととサラッと書き換えたのが凄かった。せめてこの段階で集金を停止していたらまだなんとかなった気もするが、このサービスを開発をした「Liverty」という集まりの理念は以下のようなものらしいので、それも不可能だったように思える。

「ものすごいスピードで立ち上げる」という活動理念だ。Web業界では、サービスが荒削りでもβ版としてリリースして実際に使ってもらい、ユーザーから意見をもらいながらブラッシュアップしていく文化がある。「走りながら考える」(ヨシナガ氏)というLivertyのやり方はまさにその文化を体現するものだろう。

studygiftはなぜ暴走したか 「説明不足」では済まされない疑念、その中身 (2/2) - ねとらぼ

先にリンクした「ざまーみろ」を見る限り、内部では「(サービスを止めず)金を目標額集めた時点で円満終了!」と思っていたのだろう。ところが実際は中間点でしかなく、全員返金が終着点ならばむしろ“その後”の方がずっと長かったことになる。(サービスの開始は5/17で、目標額が集まったのが20日。返金決定は28日。)この間「誤った前提で集めた金を握ったまま言い訳を続ける」という行動を続けていたのは、詐欺まがいと言われても仕方ないレベルで、印象を決定的に悪くしたのは間違いない。

3.炎上後 - 「行動すること=正義」という噛み合わない言い訳

この騒動で関係者がしきりにアピールしていたことが二つある。一つは「行動することは正しい。だから俺たちは正しい(≒行動しない奴は悪)」という理念、もう一つは「困ってる苦学生を助けることに何の問題があるんだ」というもの。以下の発言あたりがそれを端的に表している。

「困ってる苦学生を助けたい」というのは完全な正論であって、基本的に叩きようがない。2chに投稿されるような煽りレスを覗けば、そこに文句をつけることはまずないと言ってもいい。実際問題として多くの人は記事内で「困ってる学生を助けることには賛同しますが」と前置きしていた。

そう、最初から問題になってたのは「目的(建前)と行動が一致していない」ということで、つまり手段の話だ。なのにそこで出てくる反応は“苦学生を助けたい”というアピールで、「学生を助ける側 vs 助けない口だけ野郎」という構図を演出する。これは印象操作の手段としてはポピュラーだし、身内へのアピールとしては悪くないだろうが、およそ誠実な態度にはうつらないだろう。

前者の「動くこと=正義」はアピールとしてはさらに狡猾だ。この前提に立つなら何か行動する時点で自動的に正義側に立つことができ、当事者がこの論法を使う限り(自分の中では)無敵の状態になる。なんせ行動するから当事者なのであって、「当事者が何も行動しない」ことはまずありえない。予防線としてはかなり汎用性が高く、すでに成功者である点も含めて人によっては絶大な効果がありそうだ。

ただ個別のやりとりとしてはともかく、端から見れば「話が通じない人」と思われてもしょうがない。なんせ根本的に話が噛み合ってないのだ。恐らく周囲の元からいた「ファン」を満足させるのには役に立っただろうが、それ以外の第三者には「目的は手段を正当化させるんだ!」という言葉を繰り返してるようにしか見えなかっただろう。

ブレーキが存在しないアクセルだけの車

今までの3つのポイントを振り返れば、要するに「ブレーキがないアクセルだけの車に乗ったら盛大に事故った」という感じだろうか。

企画時に“苦学生”の経歴をはっきりさせたり、サービス開発中に早稲田に問い合わせたり、学生じゃないとわかった時点で集金を止めたり、もっと早く返金を決定したりすればここまでグダグダになることはなかったはずだ。だが多分、内部に「ブレーキ役」が誰もいなかったのだと思う。結果としてstudygiftという車はアクセルだけを搭載して発進した。

その後はご存じのように車はあらぬ方向に向かって爆走し、坂道を止まることなく転げ落ちて、壁にぶつかって爆発炎上。もちろんアクセルは最後まで踏みっぱなしだ。しかも納得してこの車に乗った当人達はまだしも、この騒動で早稲田には大量の抗議電話がかかってきたらしい。これじゃある意味「ひき逃げをくらった」ようなもので、実は早稲田が一番貧乏くじを引いたポジションかもしれない。

ちなみにこの件に関して「これで誰が幸せになったの?」と言ってた人がいたが、安全な無人地帯か相当運がよくない限り、暴走自動車に乗って幸せになることはあんまりないんじゃなかろうか。安全な場所からコンテンツとしてニヤニヤ眺めている人間は別として。

運営者談「もうちっとだけ続くんじゃ」

今studygiftのサイトはトップにデカデカとお詫びが掲載されていて、途中からやっていた新規の学生の募集も停止している。だが仕切り直してまだ続けるつもりらしい。まあ実際何度も「やめない」と語っていたので、意欲があるのは間違いないのだろう。

ただ再開するにしても、また“ああいう女性”を再度すぐに使うのかというのが気になるところだ。話題性を重視するなら早めに再開する必要があるが、それだと「単にほとぼりが冷めるのを待ってただけかよ!」という反応は避けられないだろう。逆に時間をおけば火種が消える代わりに話題性も落ちるわけで、「ああ、そんなのありましたね。あれは豪快に株を落とした一件でしたね!」と古傷を呼び起こしたあげくサービスそのものはまったく話題にならず消える、という悲惨な結果も予測される。

やる気はともかく近年まれに見る10日以上も炎上を続けた凄い案件なので、リセットするにしても難しいだろう。ただ炎上したサービスの多くが終了という形でケリを付ける中で、本当に復活を目指すならそれはそれで興味深い。ただ近年さらに情報の消費が早くなったこのWebでは、半月もすれば関係者すらstudygiftの存在を忘れてる……というオチすらあり得る恐い時代なのだが。

posted by RPM at 10:00 | TrackBack(0) | BackLink | 議論・揉め事 | 更新情報をチェックする
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