2009年09月26日

YouTubeの5段階評価システムはなぜ機能しなかったのか

YouTubeが5つ星級の発見:評価システムは無意味だった

はてブでも話題になった上の記事の話。内容としてはTwitterにpostした発言ややりとりを整理したもの。

そもそもほとんどの利用者は「評価」しない

記事の中だと1つ星が少しと大量の5つ星があって、2、3、4は事実上ゼロだ。*と書いてあるが、実際はそれよりさらに多数の「評価しない」という選択がされている。不特定多数に動画や(Blogなどの)記事を評価させる場合、実際に「評価する」にたどり着くまでは以下の過程を踏む必要がある。

  1. 評価対象に関心を持つ
  2. 関心を持って閲覧する
  3. 閲覧後(あるいは閲覧中)に「評価しよう」という気になる
  4. 実際に評価する

実際に評価するのは4までたどり着いた利用者で、そこで始めて(今回のYouTubeの件だと)5段階の評価がおこなわれる。「見るのを途中でやめた」「見たけど特に評価するモチベーションは起きなかった」「そもそも見る気も起きなかった」という圧倒的多数の利用者は、実は「無評価」という評価を無意識に下している。全体から見て多数の「星5」の評価の反対は(ごく少数の)最低評価の「星1」ではなく、評価にすらたどり着かなかった単なる「無評価」だったと考えた方がいい。

「つまらない」と思ったらそもそも評価しない

上記のようにまず「評価してもらう」という時点でそれなりのモチベーションが必要になる。記事中だと「評価が星5と1に偏っている」と書いてあるが、星5が多いのは「面白かった!」「素晴らしい!」という感想がそのまま評価する動機に繋がり、それが結果にも直結しているからだろう。別段細かく検証するような心理状態にでもならない限り、直感的な感想は「良い/悪い」ぐらいの評価しかないだろうから、良いなら最高の星5を選ぶのは自然な選択だと思われる。

次に多いのは星1だが、これはよく見なくても星5に比べれば極端に少ない。その数は2から4に比べればマシだが、それでも星5に比べると相手にもならない。1をつける理由は「つまらなかった」とか「むかついた」などの一番可能性が高いが、そもそもつまらなければ評価する以前にブラウザのタブを閉じる可能性の方がずっと高い。つまらないものを無理して見続ける人間よりも、途中でやめて別の行動を始める利用者の方がどう考えても多いだろう。

特にYouTubeは無料の動画サービスなのだから、金を払って入った映画館のように無理して見続ける動機などないに等しい。これはYouTubeに限らず、無料のWebコンテンツならほぼ間違いなく同じ結果になるはず。それでも星1の数がそれなりにあるのは、「時間の無駄だった」という怒りや「こんな糞動画アップしてるんじゃねえ」というこき下ろし目的だと思われる。ただそのような動機を考慮しても、あのグラフからはわざわざ星1の評価を下す利用者は星5の評価をする利用者と比べ、ほぼ無視できるほど少ないことが見て取れる。

多段階評価が機能するとき

とはいえ、今回の記事だけ見て「すべてのサービスで多段階評価が無意味」という話にはならないだろう。Amazonのレビューや映画レビューサイトのCinemaScapeでは(十分かどうかは別として)5段階評価のシステムが機能している。これはレビューに対するモチベーションというか、「執着」が大きな原動力になっていそうに思える。例えば名前を出したAmazonとCinemaScapeなら、以下のような理由が挙げられる。

Amazonレビュー
  • 金を出して買った商品の場合、当然身銭を切っているわけだから無料コンテンツとは比べものにならないほど執着度は高くなる
  • 物販サイトなので「直接金(の流れ)と結びついている」という特徴
  • レビュー自体に「参考になった」という評価が存在して、それを稼ぐという目的が存在する
  • レビューはアカウントと紐付けられているので、レビューを繰り返せばアカウントそのものに一定の価値が生まれてくる
  • (今はもうないが)発売前レビューで好き勝手書いて注目されたい!というような需要
CinemaScape
  • 「映画批評サイト」なので元から「能動的に批評・レビューしたい利用者」しか参加しない
  • 当然モチベーションも最初から高く、過去に投稿されたレビューと比較され、レビュー用のカウントを取らないと利用できないという点から、利用のハードルがそもそも比較的高い
  • レビューするのは「映画好き」「映画をたくさん見ている」可能性が当然高く、レビュー対象を相対的に評価できる知識・能力を持っている可能性が(少なくともYouTubeなどの利用者に比べれば)高い
  • Amazonの「参考になった」と同じようなレビューに対する「投票」システムやユーザランキングが存在するため、「良いレビューによってアカウントの価値を高めたい」というようなインセンティブが働く

いずれにしてもレビュー対象による「執着」が強ければ強いほどレビューする可能性が高く、さらにわざわざ多段階評価を使いこなしたり、時間をかけてまで質が高いレビューをするインセンティブがあるほど、そのレビューの信頼性や価値が高まると考えられる。今回の話題の発端となったYouTubeはその辺りがまったく考慮されておらず、無料動画では強い執着が生み出せるわけもなく、さらにわざわざ時間をかけて段階評価するインセンティブも存在しなかったので、このような結果になったのではないだろうか。

「Good評価だけ」という選択肢

YouTubeや(普通の)Blog記事に対する評価の場合、恐らくGood/Badのような2段階評価すら不要で、Web拍手やはてなスターのようにプラス評価さえあれば十分だろう。それはすでに書いたように、動画・記事を見終わってBad評価をするよりも、明らかに途中で閲覧をやめてしまう可能性能が高いから。このようなシステムなら、Goodが少ない(あるいはない)という事実ですべてを表すことができる。

要するに、「不特定多数に気軽に見てもらう」というようなサービスに5段階評価システムは複雑すぎて馴染まず、もしやるとしても入り口(閲覧)が手軽ならば出口(評価)も手軽でなければ上手く運用できない、という話なのだろう。

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