2012年04月13日

“残念”と呼ばれた日本のWebで「はてなまとめ」が失敗し「NAVERまとめ」が伸び続ける理由

最近、NAVERまとめの勢いが止まらない。自分の観測範囲でも自然に見る機会が増えたし、観測範囲の話にしなくなったってはてブのホッテントリにはNAVERまとめが入りまくりだ。例えばこれを書いてる時点での最新はてブの週間ランキング(2012/3/19から3/25)のうち、上位5位の3つがNAVERまとめになっている。

その前の週(3/12から3/18)に至っては4/5個がNAVERまとめの記事で、少なくともはてブ周辺では大フィーバーということになる。

これは自社サービスのはてなまとめが暗たんたる有様になってるのとは対照的だ。後追いで作ったわりに話題になったのは最初だけで、今ではトップの「新着記事」に半月前のまとめが並んでる。はてなニュース(はてなブックマークニュースではない)やはてなボトルの忘れられっぷりや、満を持したはてなブログの未完成状態、あるいは先日のはてブボタントラッキング騒動と、最近のはてなは特によくない話題ばかりが目立つ。タイムマシン商法で(日本での)技術力を前面に打ち出してそれなりに好評を集めていた時代が、まるで遠い過去のように思えてくる感じだ。

話をNAVERまとめに戻すと、これは「キュレーションサービス」という流行の言葉に乗っかった宣伝をしているが、平たく言い直せば「あらゆるWebページから文章や画像を"拝借して"まとめページを作れる」というもの。「まとめサイト」といえば多くの場合に「2chスレからのコピペ情報で形成されるサイト・ブログ」を指すが、NAVERまとめはそのコピペ元が2chにとどまらずネット中のページを対象にしているのが大きく違う。

このサービス、恐らく建前的には「まとめられた文章・画像は"引用"だ」ということになっているんだと思う。ところがNAVERまとめのトップページに並ぶ注目まとめをいくつか見てみればわかるように、実際は引用要件がどうこう以前の問題になっている。なんせまとめた本人が書いたと思われる文章が極めて少ないか、まったく存在しない記事の方がずっと多い。ものによっては「著作権?肖像権!?それ美味しいの?」というレベルで、日本のWebサービスとしては初期のニコ動を思い出させるようなフリーダムっぷりだ。

金が儲かるNAVERまとめ - 具体的にどれぐらいの収入になるのか

NAVERまとめの大きな特徴のひとつとして、「まとめを作れば金が儲かる」というのを前面に打ち出している点がある。例えばトップページの右下をみれば、下のようなバナーが勝手に目に入る。

NAVERまとめのバナー

もちろん今までもユーザ側に金銭的なリターンがあるサービスはいくらでもあった。アフィリエイト、投げ銭、寄付、ブログの広告表示などなど。ただほとんどは間接的にいくらかのお金が手に入るという道を示していただけで、ここまで直接的に「PV=金」と言い切ってる日本のサービスは知っている限りではかなり珍しい。アカウントのダッシュボードページにはデカデカと「○○円」と表示されていて、一見するとアフィリエイトサービスの管理画面か何かと勘違いしそうだ。

実際の金額については色々あるようだが、下のページを参考にする限りある程度成功すれば「月あたり数万円」ぐらいはいけるようだ。

サイト運営経験者の皮膚感覚として、この金額は中々のものだ。新規にブログを立ち上げ、人を集める記事を書き、AmazonなりGoogleなりの広告を貼ってこの金額を目指すのは容易なことではない。恐らくかなりの時間と労力が必要になるはずだ。しかも普通の人は空いた時間にブログをちょこちょこ書く程度なのだから、現実的にはいつまでもたどり着けないかもしれない。

だがNAVERまとめは事情が異なる。なにせ普通のブログと違いPVがそのまま金になる。しかも一番難しい「コンテンツの生成」という部分は大きく省略できるので、編集に徹すればいい。「キュレーション時代万歳!」と言ったところだろうか。

「画像を転載するだけで儲かる」という手軽さ

以前たまたま見つけたNAVERまとめの記事が60万PVを超えていた。調べてみるとこれはまとめ記事の中でもかなりアクセス数が多い方に入るようで、NAVER内でも「定番まとめ」というものに入るようだ。

ちなみにあくまでこれを書いてる時点で60万PVというだけで、時間が経てばさらにアクセス数は増えていくだろう。

さてこのまとめ、中身はマンガのページのスキャン画像を並べたネタまとめで、ネットの記事としては別に珍しくないタイプ。注目点はそこではなく、この記事に表示されてる画像自体が丸々2chまとめブログから転載したものということ。しかも「色んな場所から集めて回った」というレベルではなく、記事の最後にリンクがある1カ所のまとめブログからほぼそのままコピーしてるだけだ。恐らく作業時間としては10分もかかってないのではないかと思われる。「転載・コピペ」で有名だった2chまとめブログだったが、ここではネタを転載されて食われる方になっているわけだ。

上でもリンクしたNAVERまとめインセンティブについて分解してみたという記事では大ざっぱにPVがどれぐらいの金額になるか計算している。文中の“どのくらい稼げるか試算してみる”でPVからポイントへの変換を3割と仮定しているので、同一の条件だとすると以下のようになる。

600,000PV×0.3×0.2円=36,000円

あくまで仮定に基づいた計算だが、分単位のコピペ作業で3万円以上儲かるならこれはかなり大きいと考えてもいいだろう。さらに今は新制度で「ルーキー」や「レギュラー」という枠が用意されていて、これになるとインセンティブへの変換率が「0.2円」からそれぞれ「0.4円」と「0.7円」になるそうだ。それぞれ計算すると以下のようになる。

  • ルーキー
    • 600,000PV×0.3×0.4円=72,000円
  • レギュラー
    • 600,000PV×0.3×0.7円=126,000円

NAVERは100万円も夢じゃないとアピールしているらしいが、なるほど確かにそう見える。

もう「場所は用意するから自由にやって!」は通用しない

すでにWebには利用者が何かを発信する場は有り余っている。前述のはてなのサービスが廃墟同然だったり、ユーザ数が伸び悩んだブログサービスが近年終了に追い込まれていたりと、単に「Webサービスは用意しました!じゃんじゃんコンテンツを発信してください!!」だけでは人を集めるのは非常に難しい。ましてや最近はTwitterのようなブログよりさらにお手軽なサービスが主流になってきていて、ますます「手間をかけて何かしてもらう」のは厳しいだろう。

大概、人は何かメリットがあるからこそサービスを使い続ける。特にネットは直接的な物の行き来が面倒だったり、画面を通して間接的なやりとりしかできなかったり、不特定多数に公開するという前提が大きかったので、実用的なもの以外の多くは「承認欲求」や「自己顕示欲」などが満たせるかというのが重要なウェイトを占めていた。SNSの普及によって事情が微妙に変わりつつあるようにも見えるが、それでもかつてmixiが「読み逃げ騒動」や「マイミク数自慢」なんかで大いに盛り上がったのは有名だ。あるいは最近でもTwitterやFacebookの「フォロワー数誇示」など日常茶飯事で、この手の欲求の話には例に事欠かない。

それではNAVERまとめはどうかといえば、そのポイントを「まとめれば金が儲かる」という非常に直接的な方法でクリアした。なんせ始めるハードルはゼロで、さらに“100万円も夢じゃない”わけだからこれは魅力的だ。自意識や自己顕示欲を何ら発揮できないはてなニュースやボトルが閑散とし、金が儲からないはてなまとめと大差がつくのも当然だろう。

需要に最適化したCGM≒ユーザー参加型ロケットニュース

NAVERまとめのトップにある注目まとめをタイトルだけでも眺めてもらえばわかると思うが、アクセスを集める記事の傾向はおおむね決まっている。芸能関係を筆頭にして「超簡単に○○が改善する」系のライフハック記事、○○で簡単に激やせしたりモテる!、○○するだけの簡単レシピ、ネタ画像集、○○な揉め事や炎上がネットで起こってるぞ!祭りだ!!、などなど欲望にストレートに答えるものがかなり多い。これはいわゆるライフハック系のサイトやロケットニュースあたりの記事傾向に非常に近い。

またこの手のネット系ニュースメディアは「ネットで話題になったものを特に取材することなく、そのまま記事にして垂れ流す」ということを仕事(=飯の種)にしているが、この点もNAVERまとめはほぼ同じといってもいい。要するにNAVERまとめはユーザー参加型ロケットニュース的なものと見てもそう間違いでもないだろう。少なくとも個人的には同類のものに見える。

ただこれは「狙ってやった」というわけではないと思っている。単に楽で人目(PV)を集められる記事をいくつも作らなきゃいけないとなると、恐らく自然とこうなってしまうのだろう。結局のところ「PVそのものが価値を持つ」というルールに乗っかると、取れる戦術にそう自由度はないのだと見ている。

時事ネタを読むツールとしての「NAVERまとめ」と「まとめブログ」

NAVERまとめには名前に反して“まとめ”ではなく、非常に速報的な記事が注目まとめにあがってくることも多い。これは「新聞社のニュース記事の一部抜粋」と「数個のTwitterの反応」という構成が定番になっていて、中身が薄っぺらな代わりに読む時間が極めて少なくてすむ。ちなみにこれ、まとめブログが日々やっている「新聞社のニュース記事のコピペ + 2chのレス」というフォーマットとほぼ同じだ。2chのレスがTwitterの投稿に置き換わってるだけとも言える。

もちろん違いもある。それは根本的なボリュームで、まとめブログの多くが「ニュースのほぼ全文の転載 + 数十個以上のレス」という構成を取っていたことを考えれば、全体量は数分の一。閲覧者の心情は可視化されることが少ないのでわからないが、もしこれで時事が“わかった気”になれるなら、見かけ上の時間的なパフォーマンスは相当高いはずだ。当然「実際にある程度理解する」のと「わかった気になる」のは全然違うが、次から次へとこの手のまとめが出てくるのを見ると需要があるのは確かなのだろう。

10秒チャージ!情報inゼリー

2chまとめブログは「面白い2chの書き込みをブログを通して閲覧者に提供する」と同時に、「情報を選別して味付けする」という機能を果たしていた。料理なら「生ものを調理して食卓に並べる」というあたりだろうか。ただ今更いうまでもないが、そもそもの素材の問題(2chのスレ)と客(読者)の好みによって、完成する記事はファストフードかジャンクフードのような代物だった。声がでかくて頭の悪い書き込みばかりピックアップしたり、反対意見の書き込みをことごとく削ることによって印象操作したりと、大量に摂取すれば胸焼けするし続ければ健康に悪そうな記事が盛りだくさんだ。

だがそのまとめブログからさらにネタをつまんでコピペし、中身を薄くして極限まで食べやすく(読みやすく)形成したNAVERまとめの記事は、もはやファストフードどころではなくそれをミキサーにかけた情報の流動食やウイダーinゼリーみたいなものだろう。情報洪水の中で、もはや情報を咀嚼して理解するという時間すら惜しいというのは理解できる。そういったニーズに応えているのも、NAVERまとめが伸びている理由の一つではありそうだ。ただ、はたしてそれを「キュレーション」と呼ぶのが正しいのかはよくわからないが。

まとめブログはなぜ“好き勝手”に情報を編集できたのか

コピペされた情報が主なメインコンテンツというと、やはり2chまとめブログと対比したくなる。

まとめブログが転載をある程度黙認されてきたのは、「所有権が曖昧で文句が出る可能性が低い2chの書き込みが転載元」という特徴があったからだろう。書き込みの時点で匿名だから自らやめろと言い出す人間はあまりいないし、そもそも証明する手段も乏しい。これならいくらひどい編集をしようとトラブルになる危険性は低い。また、2ch側が基本的にずっと黙認・放置しているというのも非常に大きい。(ただ、アフィリエイトの有無などによって一部対応が異なる。)

それに某ひろゆきの「嘘を嘘と見抜けないと〜」という言説がテンプレ化して、広範囲で通じるようになったのも見逃せない。結果としてこれで「2chの書き込みは嘘とデマばかりなので、それをまとめた情報が信用できないのは当たり前。真偽がどうであれ(まとめ側は)知ったこっちゃないし、真に受けて騙される方が馬鹿なだけ。悪いのは2ch」というエクスキューズが通用するようになり、まとめブログは上手い具合にこれを責任回避に利用していた。

以上の二つの特性により、まとめブログは「無許可の転載・コピペ」と「編集姿勢」に免罪符を得ることができた。正確にはそれに対する突っ込みが一定数ずっとあったが、痛くもかゆくもなかったわけだ。本来ならかなりリスキーなはずの「テキトーな情報を許可を得ずコピペ・編集して延々と垂れ流す」という手法をとり続けることができたのは、結局のところ「2chがソースだから」と考えていた。(とはいえ実際は2chまとめブログでも他サイトやTwitterのネタを普通に持ってきたり、あるいは「1度2chに書き込んで、それをコピペすればソースロンダリング終了」的なことが珍しくなくなったが。)

その点NAVERまとめはどうかと考えると、その条件の両方を満たしていないがなぜか黙認されている、という不思議な状態になっている。まとめブログのような「転載場所の呪縛」すらほぼ存在せず、それどころかまとめブログですらコピペ元に利用してる。「情報の食物連鎖」みたいなものがあるなら、今のところかなり頂点に近いところにいるはずだ。しかもGoogleアドセンスが著作権違反によって利用停止になったあとも別の広告主を見つけて順調に事業化まで果たしている。

年内に5億円規模、3年後に30億円規模の売上高を目指す。(中略)昨年末時点で月間ページビューは1億9400万、月間訪問者数は1300万人に上っている。

「NAVERまとめ」を本格的に事業化 優れたまとめ作者に奨励金も - ITmedia ニュース

Twitterなどの「お手軽で短文」なサービスが流行していることもあって、最近は特に細切れでバラバラになった情報がそのまま流れていることが多い。ブログ時代における2chまとめブログの隆盛も含めて“まとめブーム”が続いていることは間違いないだろう。NAVERがあの無法地帯に近い状態を放置しているのも、とにかくこの機に乗じてまとめ市場でトップになり、細かいことは商売の足場を固めてから考えたいという算段があるからなのかもしれない。

そしてすべてがNAVERにまとめられる時代に

「NAVERまとめは今後どうなるのか」といえば、多分これからもどんどんPVが増えて巨大なサイトになっていくのではと予想している。ブログ時代にネットを席巻したのが、かつて希望予測的に語られていた「個人が自分で取材をして、自ら記事を配信するニュースメディアブログ」などではなく、釣りタイトルと煽った内容でPVを稼ぐ「新聞社の記事と匿名の吹き上がった書き込みを周回遅れでコピペしてまとめるブログ」だったように。

何にせよとにかく金が儲かる以上はまとめの供給が途切れることはないだろうし、そこに並ぶ記事も閲覧者の欲望がストレートに反映された情報だ。人の欲望は尽きることがないから、劇的に何かが変わらない以上はこのサイクルが途切れることはないだろう。これからもNAVERまとめはあらゆる情報と欲望をどん欲に飲み込み、撹拌し、閲覧者に提供していくはずだ。

(念のため書いておくが、欲望そのものに良いも悪いもない。程度の差はあるにせよ、どんなサービスでも何かしらの欲望が満たされないものは見向きもされない。最初に話題にしたはてなのサービスのように。ただ需要にせよ供給にせよ、CGMでここまでストレートに欲望全開なのは中々珍しいとは思う。)

かつて某取締役は日本のWebを“残念”と表現したが、そのような環境の中で進化と最適化の果てに誕生したのが恐らくNAVERまとめだ。これは一種の恐竜やモンスターのように見えるが、別の意味では「日本のWebを写す鏡」にも思える。某取締役が「残念」と語って約3年、遅れてやってきたCGMの“本命”とも呼べる勢いのNAVERまとめがこれからどうなっていくのか、色んな意味で目が離せない。

posted by RPM at 13:00 | TrackBack(3) | BackLink | Internet・Webサービス | 更新情報をチェックする


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  • Excerpt: “残念”と呼ばれた日本のWebで「はてなまとめ」が失敗し「NAVERまとめ」が伸び続ける理由 - conflict error
  • Weblog: caprinのヲタ更正日記 | Tracked: 2012-04-14 23:46
  • naverまとめはそんなに簡単じゃない。
  • Excerpt: はてなブックマークを見ていたらconflict errorさんの“残念”と呼ばれた日本のWebで「はてなまとめ」が失敗し「NAVERまとめ」が伸び続ける理由という記事を拝見しました。 はっきり言ってN..
  • Weblog: ぺんぎん速報 | Tracked: 2012-04-16 23:27
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